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きらきらの まほう

あやは、きょう めがねを買いました。ぴんくのフレームのめがねです。

 

じゅぎょう中だけでいいから、めがねを かけるよう、目医者さんに言われたのです。

 

あやは、めがねなんて かけたくありません。 黒板の字は 見にくいけど、一番前の席なら見えます。 それに、クラスで めがねを

 

かけている女の子は だれもいないのです。

 

ねる前に、あやは 自分のへやで もう一度、めがねを かけてみました。 そうっと、かがみを のぞきこみます。

 

 

めがね屋さんで見た時は、ぴんくのフレームが、きらきらと光っていました。 でも、今はぜんぜん きらきらしていないのです。

 

それに、かがみの中の めがねをかけた あやのかおは、目が小さく、口がゆがんでいます。

 

「かわいくない」

 

めがねをかけたら、みんな、なんて言うだろう。 けんたくんは どう 思うかな。

 

 

けんたくんは、クラスでいちばん せが高くて、サッカーのじょうずな男の子。 三年生になってすぐ、あやは、けんたくんが 大好きになりま

 

した。 この前の席がえで、やっと となりの席になれたのに。

 

あやの目から なみだが こぼれました。

 

 

「あやちゃん、おきてる?」

 

おばあちゃんです。 あやは いそいで めがねを はずすと、目をこすりました。

 

「あやちゃん、その めがねを かしてごらん。 わたしが、まほうを かけてあげる」

 

おばあちゃんは、にっこり わらいました。

 

「おばあちゃんが、まほう?」

 

 

あやは、びっくりして、おばあちゃんを 見上げました。 よく見ると、おばあちゃんは、はなが高くて、目がくぼんでいて、本当に

 

まじょ みたいです。

 

「ふふふ。 とっておきの きらきらの まほうだよ。 まほうを かけおわったら、わたしが めがねを ランドセルに しまっておいて

 

 あげるからね。 あやちゃんは、ぐっすり おやすみ。 そうそう、 あしたは、学校へ行くまで けっして めがねを出したらいけないよ。

 

 まほうが、とけちまうからね」

 

 

おばあちゃんは、ふふふと わらいながら、あやに ふとんを かけました。

 

きらきらの まほうって どんなのだろう。 わたし、かわいくなれるのかな。

 

でも、おばあちゃんって、本当に まほうが つかえるのかな。 まほうなんて、うそかも。

 

あやは、ふとんの中で、わくわくしたり、どきどきしたり。 そのうち、つかれて ねむってしまいました。

 

👓

 

 

つぎの朝、あやは とても早くおきました。 お父さんもお母さんも おどろいています。

 

あやは、いそいで朝ごはんを食べ、あわてて家を出ました。 早く めがねが見たかったのです。 そんな あやを、おばあちゃんは、

 

にこにこしながら 見おくりました。

 

 

きょうしつに入るとすぐ、あやは、ランドセルから めがねケースを とり出して、つくえの上におきました。 そして、そうっと ケースを

 

あけました。

 

「あっ」

 

あやは、思わず声をあげました。 めがねが きらきら 光っていたのです。

 

よく見ると、きらきら光っていたのは、小さな花でした。 きらきらした小さなビーズが集まってできた 小さな花でした。

 

その小さな花が ぴんくのフレームに むすんでありました。 めがねに花がさいているようです。

 

 

「わあ、あやちゃん、かわいい!」

 

「見せて、見せて」

 

あやのまわりには、つぎつぎと クラスの女の子たちが あつまってきました。

 

「あやちゃん、めがね、かけてみて」

 

友だちの ももちゃんに言われて、あやは どきどきしながら、めがねを かけました。

 

「かわいいー」

 

みんなにほめられて、あやの ほっぺも きらきら しています。

 

 

あやは、思い出しました。 そういえば、おばあちゃん、ビーズを ならいはじめた、って言ってたっけ。 まほう だなんて、やっぱり うそ。

 

おばあちゃんは、わたしが ねてから、この ビーズの花を作ってくれたんだ。 あやは、ビーズの花を そっと なでました。

 

 

そんな あやを見て、となりの けんたくんが、小さな声で 言いました。

 

「へえ、めがね、にあうじゃん」

 

 

あやの むねが どくんっと なりました。 むねの中が、きらきらしたもので、いっぱいに なっていきます。

 

やっぱり、おばあちゃんは、まほうを かけてくれたんだ。 あやは、むねの中の きらきらが、とび出さないように、むねを ぎゅっと

 

おさえました。

 

 

あやは、帰ったら。おばあちゃんに、きらきらの まほうを、おしえてもらうつもりです。

 

☆☆☆ おわり ☆☆☆

 

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。 きらきらした初恋を、思い出してもらえたら 嬉しいです(#^.^#)

 

 

 

 

 

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